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旅行やマイルの話を中心に、たまにグルメやラーメンの話など気ままなことを好きなように書いている大阪発信のブログです。

フランスパリの治安 観光客目線で考えてみる

パリの治安悪化の歴史的背景

移民労働者の増加

ポルトガルの町を歩いていると、欧米人ばかりで、黒人やアラブ系、我々黄色人種であるアジア人にはあまりお目にかかりません。ところが、フランスパリの街を歩いていると、黒人やアジア人に良く会います。

 

長い歴史がそうさせてきたようです。

 

18世紀後半から出生率が低下したフランスは、不足する労働力を外国人労働者で補って来ました。2回にわたる世界大戦や30年間の栄光と呼ばれた好景気時代には、労働需要は高まる一方でした。1945年に国は移民局を設け、国家主導で海外から労働者をかき集めていったのです。

 

最初の頃は、スペインやポルトガルといったヨーロッパ国内からの移民が多かったのですが、徐々にマグレブ諸国からの移民を多く受入れるようになったのでした。マグレブ諸国とはモロッコアルジェリアチュニジア等の北サハラの北部アフリカのことで、元々はフランスの植民地でした。これらの国々が不景気で労働力をもてあましていたという理由と、フランス語の言語的問題が少ないこと、地理的に近いことがマグレブ諸国からの移民を多く受入れた理由だったようです。

 

2015年には移民1世は750万人(人口比11%)、また2世(片親又は両親が移民)は約850万人と推計されて、1、2世を合わせると1,600万人と人口の24%を占めるまでに至っています。

フランスは出生率が2.0近く(2016年1.88)あり、先進国では出生率が回復した国として知られていますが、移民や外国人の出生率が高いことが理由のようです。移民以外(所謂フランス人)の出生率は1.65に対して移民の女性の出生率は2.5外国人国籍の女性の出生率は3.29ではないかとまことしやかに言われています。(フランスは憲法で国民は出自、人種、宗教の違いにかかわらず、法の元の平等が保障されていますので、国としての移民(外国籍)の出生率の統計は有りません。)

 

また、国籍法では出生地主義を採用していることから、外国人国籍の女性がフランス国内で出生すれば、子供は18歳になった時点でフランス人になります。こうしたことから、フランス人に占める移民(1世、2世)の割合はどんどんと増えてしまった(これからも増え続けていく?)のです。

景気後退と失業率の増加

一方で、80年代以降のフランスの景気後退により、移民たちが担ってきた単純な労働は失われていきました。

 

1990年代になるとマグレブ諸国出身者の失業は40%を超えるようになっていったようです。移民の失業問題や貧富の差は激しくなり、移民の30%は貧困層とも言われています。

 

もともとは移民は短期で帰国されることが想定されていたことから、仮設の住宅に住んでいましたが、滞在が長期化してくると仮設住宅がスラム化していきました。また、自国に居る移民の家族を呼んで暮らす場所も必要になってきました。

 

そこで1970年代以降、大都市郊外に建設されたHLMと呼ばれる中・低所得向けの公共住宅に多くの移民が居住するようになっていきました。そして、先のように80年代の景気低迷による失業者の増大や貧困層の増加によりこうした公共住宅は荒廃していきます。

 

パリ市内で言うと北東部の18区、19区、20区の環状道路沿いの高層団地群や北部郊外のサン=ドニがこれに該当します。貧困と、貧富の差による犯罪の多発、こうしたことでパリの北東部の治安は悪化していきました。出身国間のコミュニティが出来、コミュニティ同士の暴力事件も増えていきました。また、背景には移民たちの被差別意識の高まりもあったのかもしれません。

 

2015年のパリ同時多発テロの犯人もサン=ドニ出身者でした。

観光地としてのパリ

世界一の観光客が訪れる町

2018年にフランスを訪れた外国人観光客数は約9,000万人と過去最高を更新しました。世界一観光客が訪れる国となっています。訪日外国人の2018年の実績は3,119万人であったことを比べると、日本の約3倍の来客数で、実力のほどが伺えます。

 

パリはヨーロッパ一治安が悪いとも言われていますが、治安もテロも、また黄色いベスト運動のデモ行進も観光客の来訪には関係が無かったということになるのでしょうか。一方、本当に観光することが危険な国(都市)であれば世界中からこんなに多くの観光客は来ないということも言えるでしょう。

 

ちなみに観光客がフランス国内に落としたお金は562億ユーロ、約7兆円だそうです。幸いながらパリの観光地はセーヌ川を挟んだ中心地に多く、治安が悪いとされる市内北東部や北部郊外を訪れることは少ないでしょう。例外は、モンマルトルの丘にあるサクレ・クール寺院が18区にあることとサン=ドニ大聖堂やスタッド・ド・フランス(ワールドカップ決勝が行なわれたスタジアム)がサン=ドニ県にあることくらいでしょうか。

 

下の写真は治安が悪いと言われるモンマルトルの丘とサクレ・クール寺院ですが、日中歩く分には問題はありません。

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観光客が注意すべき点

では、我々観光客はパリを観光する際にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

 

先ずはスリです。観光客が集まるところにスリが多く集まってくるのは世の常です。地下鉄などの乗り物に乗るときに、日本人は扉の脇に立つことが好きですが、ここはスリにとって一番の狙いどころだそうです。扉の閉まる間際に物を取って外に逃げれば追いかけることは出来ません。従って乗り物に乗るときは、鞄を前に持って、車内の奥に進むことが大事です。

 

またエッフェル等周辺やルーブル美術館周辺では署名活動に見せかけたスリが横行しているようです。慈善活動をしているので署名をお願いしますと言われ、証明をしている隙に鞄を空けられ物が取られるというものです。見ず知らずの日本人に声がかかることはまずありえません。声をかけられても無視をするに越したことはありません。

 

目の前で小銭を落とされ、気を取られている隙に鞄から者を取られるパターンも有ります。スリは複数名で役割分担を決めて、狙った獲物を捕らえます。(かく言う私も、昔マドリードの満員の地下鉄で大人数に囲まれ財布をすられたことが有ります。)狙った獲物にならないように、鞄は前に抱え、周りを注意深く気にし、隙を見せなければ、それだけでスリに遭う可能性を低くすることは出来ると思います。

 

また、フランスはカード社会ですので現金は小銭程度しか持ち歩かず、支払いはクレジットカードを利用すればよいでしょう。仮に被害にあったとしても小銭程度しか持っていなければダメージは小さくて済みます。

 

エッフェル塔周辺や、モンマルトルの丘周辺には路上に物売りも数多くいますが、安くは無く、トラブルに巻き込まれますので、早々と立ち去りましょう。ミサンガ(腕飾り)を勝手に巻きつけられて高い値段を請求するトラブルも発生しているようです。

 

以上、充分に注意してさえいれば、世界一観光客が訪れる町ですから、そんなに怖い思いをすることは無いと思います。観光客目線でパリの治安を考えてみました。